こんにちは、プラチナムタイムズ編集部です!
本コラムでは芸能事務所の現役マネージャーでもある編集部メンバーが、最近気になったエンタメ業界を驚かせたビジネスニュースに対して “マネージャー視点” で取り上げる対談企画です。
◆ANYCOLOR、上場後一時フジテレビを時価総額で越す
<参考記事>
ITmediaビジネス:「にじさんじ」のANYCOLOR、上場後初の決算 純利益は前期比3倍増の27.9億円
https://www.itmedia.co.jp/business/articles/2206/17/news122.html
今月は大きなエンタメIPOニュースがありました。
VTuberプロダクション「にじさんじ」を運営するANYCOLORが6月8日に新規上場。16日には時価総額が2714億円に達して、フジ・メディア・ホールディングスの時価総額である2667億円を上回りました。
注目したいのは売上構成比です。
YouTube等の各プラットフォームでの投げ銭やアドセンスを含むライブストリーミング領域の割合が一番多いと思いきや、総売上高に対してグッズやデジタルコンテンツ販売のコマース領域が約半分を占めており、次いでライブストリーミング領域が約20%と続いていました。
似た業態のUUUMだと、YouTubeからのアドセンス収益が総売上の半分以上を占めているので、それと比べてもANYCOLORの売上構造は意外でした。
そういえば、YouTubeの2021年度のスーパーチャットランキングを1位〜9位まで日本のVTuberが独占していたニュースもありましたね。
にじさんじの壱百満天原サロメさんがYouTubeチャンネル開設後、14日で100万登録を突破したというのにも驚きました。
芸能人のチャンネルで100万登録突破が早い順に並べると、嵐(2日)→佐藤健さん(3日)→江頭2:50さん(8日)→手越祐也さん(11日)→壱百満天原サロメさん(14日)と、二宮和也さんや本田翼さんよりも100万人突破までが早いです。
VTuberカルチャーへのファンが増えてきていることを考えると、今後も100万登録クラスのVTuberが多く生まれてきそうですね!
◆アミューズがエンタメテック領域の新会社を設立
<参考記事>
gamebiz:アミューズ、次世代エンタメ創出を目的とした新会社「Kulture」とWeb3・メタバース特化ファンド「KultureFUND」を設立
https://gamebiz.jp/news/351760
芸能事務所のアミューズが、Web3・メタバース等を活用した次世代エンターテインメント創出を目指す新会社「Kulture」とWeb3・メタバース領域のスタートアップへの投資を行なう「KultureFUND」を設立しました。
サイバーエージェントが芸能人のNFT企画や販売をサポートする「芸能人とNFT相談センター」 を設立したりと、エンタメ×テック分野の話題が多くなってきましたね。
とはいえ、芸能事務所は新しい技術やサービスを様子見しがちですよね。。
<参考記事>
CyberAgent:おもしろ企画センター、タレントのNFT活用をサポートする専門組織「芸能人とNFT相談センター」を設立、サポートを開始
https://www.cyberagent.co.jp/news/detail/id=27351
新サービスだけでなく、既存サービスの仕様変更なども気を遣う必要があります。
最近だとMeta社がブランドコンテンツに関するポリシーを変更し、金銭の発生しないギフティングであっても、ブランドコンテンツツール(アカウント名の下に表示される広告であることを示すタグ)を設置することが必須となりました。
<参考記事>
Meta:ブランドコンテンツポリシー
https://www.facebook.com/business/help/221149188908254
以前は、SNSマーケティングに関する業界団体であるWOMマーケティング協議会のガイドラインとして「#PR」や「#Supported」のようなハッシュタグを記載すればOKとされていたものが、プラットフォーム側のポリシー変更でより明確に表示することになりますね。
Twitterも長文作成機能であるNotesをテスト運用していたりするので、マネージャーとして仕様変更に対応できるようにタレントが使っているサービス情報には敏感でいたいですね。
◆芸能界の労働環境改善の動き
<参考記事>
映画ナタリー:日本映画の未来のために、是枝裕和らが映画界の共助システム構築目指す新団体を発足
https://natalie.mu/eiga/news/481502
エンタメ業界の性加害やハラスメントのニュースが無くならない中、映画業界では映画を持続可能な産業として、また多様性を尊重する文化芸術として支援するために映画監督の是枝裕和さんと諏訪敦彦さんを共同代表として「日本版CNC(セーエヌセー)設立を求める会」が設立されました。
これは「教育支援」「労働環境保全」「製作支援」「流通支援」の4つが支援項目として掲げられていて、製作や配給支援といったビジネス面のみでなく、労働環境の適正化についても触れられています。
芸能人は芸能事務所に所属していても個人事業主として活動しているケースが多く、労働環境への公的な支援や補償を受けにくい、またそういった知識が届きにくいこともありますね。
昨年4月からは特別加入制度によって、芸能人も労災保険に入れるようになりました。
逆に言うと、ドラマ撮影でのスタントや炎天下での長時間ライブパフォーマンスなど、業務中の危険が伴う職種なのに、それまでは治療は自己負担で休業補償などもありませんでした。
また今月1日には芸能界で働く人たちのメンタル相談を受け付ける窓口「芸能従事者こころの119」が開設されました。
事務所のマネージャーももちろん親身になって相談に乗りますが、臨床心理士からの専門的なサポートを受けられる窓口があることは安心に繋がります。
芸能事務所としても、タレントが受けられる事務所外の公的サポート情報は常にキャッチアップして、所属者へアナウンスをしていく必要がありますね。
<参考記事>
毎日新聞:芸能界のメンタル相談窓口開設 ハラスメントなど臨床心理士が対応
https://mainichi.jp/articles/20220601/k00/00m/040/224000c
◆「THE MATCH」ABEMA開局史上最高視聴者数を記録
<参考記事>
スポニチ:天心VS武尊 世紀の一戦「THE MATCH」ABEMA開局史上最高視聴者数を記録
https://www.sponichi.co.jp/battle/news/2022/06/22/kiji/20220622s00003000371000c.html
那須川天心と武尊の世紀の一戦「THE MATCH 2022」は、日本中が熱狂した1日でしたが、視聴者数の面でも大きな話題になりましたね!
PPV(ペイ・パー・ビュー ※動画毎の課金視聴)は一般チケットの金額が5,500円という価格の中、50万件以上の販売になったそうですよ。
音楽系の有料オンラインライブのチケット販売件数で比較すると、乃木坂46の白石麻衣さんの卒業コンサートが23万件、BTSの今年3月のライブが3公演で102万件でした。
これと比べても50万件という数字はインパクトがありますね!
スポーツに限らず、注目を集める映像コンテンツの有料配信が主流になってきていますが、同時にインターネットでお金を使うことに慣れている人たちが増えている印象です。
今回の一戦をきっかけに “価値あるものにはお金を払って観る” という体験が一般化していって、PPVという仕組みはより浸透していくでしょうね。
今月気になったニュースはこんなところで。
7月はどんな驚くニュースが入ってくるのか、今から楽しみですね。ではまた。
【執筆】
新保紘太郎(プラチナムタイムズ編集部)