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芸能界屈指の神社好き・賀集利樹が教える “神社の楽しみ方”

テレビ朝日系連続ドラマ『仮面ライダーアギト』の主演・津上翔一役で俳優デビューし、幅広い層世代から支持されている賀集利樹。國學院大学神道文化学部の出身で、芸能界屈指の神社好きとしても知られています。

そんな“神社ガチ勢”の賀集に、女優・モデルであり「神社の魅力をもっと知りたい」という “神社ビギナー” の八木響生が、神社の楽しみ方を尋ねてみました。

賀集ならではの神社の過ごし方や魅力の話から、プラチナムプロダクションの先輩後輩として、芸能界ならではの不安の向き合い方にまで話は派生していき……?

賀集 利樹(かしゅう としき)

1979年1月16日生まれ、兵庫県出身。
俳優。2001年1月から2002年1月まで放映されていたテレビ朝日系連続ドラマ『仮面ライダーアギト』の主演・津上翔一役で俳優デビュー。2009年4月に國學院大學神道文化学部神道文化学科に入学。大学入学のきっかけは、仕事で訪れた伊勢神宮でグローバルな時代に日本の文化、歴史を知らないことを痛感し、日本文化や歴史を勉強したいと思ったこと。2014年に同大学を卒業し、俳優業と平行しならがも神社の魅力を伝えている。

八木 響生(やぎ ひびき)

2002年11月25日生まれ、千葉県出身。
高校在学中に時代にデビューし、『早稲田アカデミー』の広告や『Liilas』のカタログモデルとして活躍。2021年に高校を卒業し、女優として、ドラマや映画の出演を志している。

穴八幡宮は芸能や商売をしている人がよく参拝に来る神社


八木響生(以下、八木):今日は事務所の大先輩の賀集さんに神社の魅力を教えていただけるってことで、高田馬場にある「穴八幡宮」に呼ばれたんだけど……賀集さんにお会いするの緊張するなあ……。あっ!

賀集利樹(以下、賀集):おーい!八木ちゃん〜!久しぶりだね〜!


八木:賀集さん、ご無沙汰しております。今日は私に神社の魅力を教えていただけるんですよね!
私、京都とかで神社を巡ったりはしているんですけど、あんまり詳しくなくて……。

賀集:全然大丈夫!でも、京都の神社を巡ったことあるんだね!京都にはいい神社がたくさんあるよね。

八木:はい!でも、なんで今日は高田馬場の穴八幡宮なんですか?

賀集:この穴八幡宮はね、冬至から節分まで、金銀融通の御利益があると言われている「一陽来復」という壁に貼るお守りをもらえるんだよ。商売にご利益があるといわれているから、僕たちみたいな芸能関係の仕事をしている人間にとってはぴったりかなって。僕も5年前ぐらいから通っていて、いつもお守りをもらっているんだ。

八木:へえ〜いいですね!ちょうど今後の活動に迷っている時期でもあったので、ご利益に授かれるといいなあ。

賀集:そうだったんだね。いいご利益があることを願って、さっそく歩いてみようか!

八木:わかりました!神社の作法とかってどんなものがあるんですか? 
いつもなんとなくやっているつもりではあるんですけど、正式なものを教えていただけたら嬉しいです。

賀集:もちろん。ただ、作法といっても神社って厳密な決まりがあるわけじゃないんだ。敬意の表し方は人それぞれだし、参拝の作法も神社や地域によっていろいろだからね。今日はその中でも僕がいつも守っていることを教えていくね。

八木:ありがとうございます!

神様も人間と同じ。やられたら嫌なことはしてはいけない

▲穴八幡宮の鳥居をくぐる賀集と八木


賀集:まず前提として、神様も人間と同じで、やられたら嫌なことはしちゃダメということ。敬意を持って歩いていくということが大事なんだ。例えば神社に入るときは必ず鳥居があるよね。この鳥居がをくぐるときは、目上の方のお宅を訪問するような気持ちで、一礼してからくぐろう。

八木:なるほど。お邪魔しますって気持ちが大事なんですね。

賀集:そうそう。参拝が終わって、境内を出る際も社殿の方に向き直って一礼するもの忘れないようにしようね。


賀集:一礼したら、階段を登ってみよう。さっそく朱色の楼門がみえてきたね。

八木:この建物の中には、弓を持った人がいますね。

賀集:そう。江戸幕府の御持弓組頭・松平直次がこの地に的場を築いて、弓射の守護神として八幡宮をお祀りしたんだ。今でも流鏑馬(やぶさめ)といって、走る馬の上から矢で的を射る、「神事高田馬場流鏑馬」というイベントもあるんだよ。

八木:今も続く伝統的な行事があるんですね!見てみたいなあ。


賀集:そして神社の中に入っていくと必ずあるのが、この手水舎。ここでも僕が意識していることがあるよ。

八木:あ、なんか手を洗う順番ってありますよね。神社の手水舎にくると、イラストとか貼ってある気がします。でもいつも忘れちゃうかも。

賀集:そうだね。手水舎の近くには順番を説明してくれるものが貼ってるあることが多いから、それを見ながらでも大丈夫!一般的な作法としては、こんな感じ。

①あらかじめハンカチを用意しておき、浅く一礼をする。
②まず左手を洗い、次に右手を洗う。
③次にもう一度、左手に水をためて、その水で口をすすぐ。
④今一度、左手を洗い、ハンカチで口と手をふいて、最後に浅く一礼する。


賀集:ひしゃくがあるときは口をすすいだあとに、柄(え)を水で流すのも忘れないようにしよう。手と口を清めたら、お賽銭と拝礼をしていこうね。


八木:すごい、立派な社殿ですね。お賽銭と拝礼で意識することはありますか?

賀集:まずお賽銭に関しては、お金を投げ入れないってことかな。自分も誰かにお金を投げられたら嫌だよね。神様も同じだと思って、静かに入れよう。

八木:たしかに、お金投げつけられたら嫌ですね。よくお正月にテレビなんかで、お金を投げてるのが映ってますが、あれはあまりよくないのかもですね。拝礼はどうすればいいですか?

賀集:お賽銭をして会釈をしたら、二拝二拍手一拝で拝礼しよう。これは神社によって異なることもあるんだけど、基本的にはこれで大丈夫。

八木:わかりました!あ、ちなみに拝礼しているときって何をお願いすればいいんですか?

賀集:そうだね、これは結構人によると思うんだけど、僕はまず神様に感謝を伝えているね。神様に見守っていただいていること、神社を訪れ神様に参拝できたことに、まず感謝しよう。そのあとで、願いごとを唱えているんだ。

八木:やはり感謝の気持ちが大事なんですね。よし、やってみます。

神社は将来の心配ごとや漠然とした不安を落ち着けてくれる場所

賀集:神社に入ってから拝礼までの一連の流れはこれで大丈夫。あとは自分なりに神社を楽しむといいよ。

八木:自分なり、ですか。賀集さんはどういった楽しみ方をしているんですか?

賀集:僕はね、神社にある木や石をゆっくり見ているかな。神社の教えの神道っていうのは、もともと自然にあるものに神を宿るって考え方だから、そういうものをみて、自然のエネルギーを感じているんだ。

八木:木や石ですか。あまり注目してこなかったかも。

賀集:神社にある木、特に御神木(ごしんぼく)といわれる木には、神体としての木や神聖視される木もあるからね。この木なんてすごく立派だよね。

八木:あーすごいですね。根がちゃんとしているし、木の枝も一本一本がしっかりしていますね。


賀集:こうして、ゆっくり自然をみていると癒やされるでしょ。都会の中でも、ここだけ世界が違うというか。神社の横とかは車がビュンビュン通る道なのに、あんまり聞こえてこなくて、すごい静かなんだよね。

八木:そうですね。なんかすごく落ち着きます。不思議とひきつけられる感覚もありますね。

賀集:自分にとって神社は、リフレッシュできる場所なんだよね。息苦しい日常の世界とは別の世界に行けて、もう一度自分が置かれている状況を見つめ直したり、ちょっと心を休めたり、参道を通って帰っていく頃には、すっきりした気持ちになって帰っていけるんだ。

八木:なるほど。たしかに何かに悩んでいるときとか、そうじゃなくても息抜きとかに来るといいのかも。

賀集:僕たちの仕事って先が見えないからやっぱり不安もあるし、悩みもあると思う。そういう心配とか不安を落ち着けてくれる場所が神社なんだよね。行くと自分がホッとするし、自分の素の気持ちに気づける。


八木:さっき神様にお願いごとをしたじゃないですか。あれも、自分に言い聞かせる意味でもいいなと思いました。

賀集:八木ちゃん、さすが!そうなんだよね。
お願いごとをするとき、神様と「こうします」って約束をすると、背筋が伸びるよね。お守りはそういう約束ごとを忘れないようにする意味があって、僕はこの穴八幡宮の一陽来復を壁に貼っているから、ふとしたときに神様と立てた誓いを思い出すんだよね。財布にもこういう小さいお守りを入れてるよ。


八木:いいですね!お守りって持っていると、一方的に神様が守ってくれるものって思ってましたけど、そういう意味を込めてもいいんですね!新しい視点を持てた気がします。

日本人なのに、日本のこと何も知らなかった。だから神道を勉強したいと思った


八木:でも賀集さんがここまで神社の魅力にハマったきっかけはなんだったんですか?

賀集:ちょうど29歳のときだから、13年前ぐらいかな。
はじめて伊勢神宮にお参りにいったときに、あまりに美しくて感動したんだよね。建築も含めて、飾らないし、無駄がなくて、これが日本の美なんだと。それと同時に、僕は日本人なのに、日本のこと何も知らないんだなって思ったんだよね。そこから、神社の本や土地の歴史の本を読むようになって、日本に根付いている「神道」って言葉に出会ったんだ。僕も神社ビギナーだったときは、神社の根幹でもある神道すらも最初は知らなかったんだよ。

八木:私もうっすらとは聞いたことはあるんですが、深くは知らないですね。

賀集:調べてみると面白いんだよ。さっきも自然をみてるときに少しだけ言ったんだけど、昔の人の考え方とか姿勢を習慣化した考え方がベースにあるから、いってみれば日本人が昔からこうやって生活をしてたとか、ライフスタイルなんだよね。自然とても偉大で、どうしたって抗えなくて、そこに神様がいるかもしれないという昔の人の考え方からから始まっているんだ。

八木:なるほど!神社に自然があるのはそうした考えが根本にあるんですね。

賀集:そこから、神社とお寺の違いがわかって。面白いなと思って、もっと勉強したいと思って、大人になってからだけど、神道系の國學院大学に入ったんだよね。

八木:大人になってから大学に通うってすごいことですよね。だって賀集さんそのときから俳優で活躍されてましたよね。

賀集:やっぱり「自分がなぜここにいるのか」っていうルーツにすごく惹かれたんだと思う。神道を勉強することで、日本のことも、自分がいる状況もわかるのかなって。実際に神道を学んでいく中で、等身大の自分や、ものの本質を大切にする日本らしさを感じるようになって、視野が広がったから、神道を学んですごく良かったなって思ってるよ。

不安は誰にでもある。不安なときに“どうもがけるか”が大事

八木:その貪欲さとモチベーションがすごいです!少し話は変わってしまうんですけど、今自分のモチベーションをどう保っていけばいいのかって自分の中の課題であって。

賀集:うん、うん。

八木:私は女優として活躍したいので、オーディション受けに行っているんですが、そこにはすでに活躍してたり、すごい方がいるじゃないですか。行くと、結構自信をなくしちゃって、なかなかそこでモチベーションを保てないときもあって。

賀集:モチベーションかぁ。難しいよね。僕たちの仕事って先が見えないからね。一年後にこれが始まりますというものがあったらそこに向かっていけばいいんだけど、それがないからって、ゴロゴロして待つわけにもいかないし。

八木:そうですよね。昨年で高校卒業して、社会人になったのもあるかもしれません。学生って学校ていう後ろ盾があったんですけど、私大人なんだっていう気持ちの変化があって。でもまだ経験も浅いし、特にこの業界って経験がとても大事だし。オーディションにはすごい人たちがいるし。やりたいことと経験がまだ追いついていない感じがあります。

賀集:怖い感じ? 不安なのかな。

八木:そうですね。正直不安ですね。


賀集:それはね、常にあるの。僕でもあるからね(笑)。来年どうなるかわからないし。こんなお芝居で良かったのか、演技で良かったのかとか、いつも気になるしね。

八木:賀集さんにもやっぱり不安はあるんですね。

賀集:もちろん!でも不安なときにいかにもがけるかなんじゃないかな。満足してしまったら、そこで終わりだし。周りが見て「良かった」って言ってくれたら受け入れた方がいいけど、自分では満足しちゃいけないんだと思うな。そういう終わりのなさも面白いからね。

八木:たしかに、不安な今もやっぱり演技は面白いし、楽しさは常にありますね。

賀集:そうだよね。あとは活躍する方法もたくさんある。僕らの時代とは違って、昔はテレビの仕事や雑誌の仕事なんかがないと、表に出る手段があまりなかったけれども、今は何かしらSNSで発信ができる。その中で大事なのは「共感」っていうこと。自分でやりたいことを発信していって、そこに共感してもらって、それをエネルギーに変えていく。不安なときこそ、そういうことをしていくのが良いんじゃないかな。


賀集:八木ちゃんは将来どんな風になりたいの?

八木:私は映画がすごく好きなので、映画で活躍する女優になりたいです。あとはモデルとしての仕事も頑張っていきたいという思いもあります。

賀集:すごくいいね!そしたら、例えば、どういう映画が好きで、「こういう映画に出たい」っていうのをもっと声に出してみるといいかもね。それは、きっと八木ちゃんの自己PRになるから。今の時代、能ある鷹は爪を隠すじゃなくて、爪を出していった方がいいと思うんだ(笑)。好きをめちゃめちゃ磨いてみるといいと思うな。この監督が好きって言えば。

八木:そうか、どんどん声に出していっていいんですね。

賀集:僕も、とある小説家が好きなんだけど、その人が脚本をしているドラマをみてTwitterに「こういうふうに面白いなと思った」とツイートしたら、その作家さんから直接メッセージをいただいて、今度出てくださいって言われたんだよね。好きがベースにあったらそういう仕事の取り方も一つあると思う。

八木:それはすごい!やっぱり見ている人は見てるんですね。

賀集:発信していればきっと届くと思う。あと、SNSをどう使って発信していくかっていうのは事務所の人と話ながらうまいこと発信できるといいと思うな。このメディアはきっと事務所の人も見ているだろうし、相談に乗ってくれるはず(笑)。

八木:これも一つの発信なんですね!(笑)今日はいろいろとありがとうございました。神社の楽しみ方はもちろんですが、私の個人的な不安にも相談に乗ってもらえて嬉しかったです!

賀集:いえいえ、事務所の先輩としてできることがあればいつでも頼ってくださいね。あとは、もし将来が不安になったら、神社に行ってみてね。きっと自分のあるべき姿が見えてくるはずだから。

八木:はい!今日はありがとうございました!!

穴八幡宮
年中無休 朝9時~夕方5時まで(朱印は4時まで)
住所:〒162-0051 東京都新宿区西早稲田2丁目1-11
電話:03-3203-7212

取材・撮影】
高山 諒(プラチナムタイムズ編集部)